ネイポ検定
モジュール

Module 4 / 5 · 14

Module 4

企業・金融が何をすべきか

WEFの論拠、WBCSDの手順、緩和階層

学習目標

  • 緩和階層(回避が最優先)を実務に落とせる
  • 事業会社と金融機関の役割の違いを説明できる
  • WEFの依存・機会の数字とWBCSDのACT-Dを位置づけられる

WEF:なぜ経営課題か

Nature Risk Rising(New Nature Economy 第1報、2020)は、世界の経済価値創出の半分超(約44兆ドル)が自然に中〜高依存だと示しました。続く The Future of Nature and Business(第2報)は、食料・土地・海洋利用、インフラ・建設環境、採掘・エネルギーという3システムの15の移行が、2030年までに最大年10.1兆ドルの事業価値と3.95億の雇用を生み得ると置きます。Global Risks Report は、生物多様性損失を長期リスクの上位に置き続けています。数字は出典年の分析であり、毎年のGDP速報ではありません。

WBCSD:どう進めるか

Roadmaps to Nature Positive: Foundations for all businesses(2023)は、ACT-D(Assess-Commit-Transform-Disclose)を背骨に、TNFDのLEAPとSBTNのAR3Tを企業の手順に落とします。ACT-D自体は Business for Nature、WBCSD、WEF、TNFD、SBTN 等が共有する高レベル行動です。自然への圧力の約90%は3システムに集中する、という整理のもと、農食、林産、建設環境、エネルギー、医薬品のセクターRoadmapがあります。

順番を間違えない

生物多様性の緩和階層は、Avoid(回避)→ Minimize(最小化)→ Restore(現場回復)→ Offset(残差の代償)です。SBTNのAR3Tはこれに Transform(ビジネスモデルとシステムの変革)を加えます。新規の重要な生息地改変を続ける一方で別地点に植林する、は順序が逆です。担当1年目が最初に社内で言えることは、「相殺の前に回避」です。

事業会社の実務サイクル

典型的な一年目の仕事は、(1) 経営と取締役会の所管を決める (2) 優先セクターと拠点を仮置きしてLocateする (3) ENCORE等で依存・影響の仮説を立てる (4) 調達・工場・開発の担当からデータを取る (5) 重要なギャップ(トレーサビリティ不足)を明示する (6) 回避・削減の施策とKPIを既存の環境中計に載せる、です。完璧な一次データがないことは普通です。ないことを隠さず、優先度つきで埋める計画を出すことが仕事です。

金融のレバー

銀行・保険・資産運用は、自ら土地を改変しなくてもポートフォリオを通じて自然リスクに晒されます。セクター方針(パーム、木材、鉱業、インフラ)、顧客のTNFD対応支援、エンゲージメント、サステナブルファイナンスの使途に自然を含める、がレバーです。TNFDは金融機関向け追加ガイダンスもあります。

日本で使える制度

自然共生サイト(OECMとして国際データベースに登録し得る民間等の取組)、30by30 Alliance、地域循環共生圏、TNFD提言に沿った開示の増加、SSBJなどサステナ開示の国内基盤。建設・不動産なら開発の回避設計とOECM、食品なら原料トレースと景観アプローチ、金融ならセクター方針、が入口として現実的です。

要点

  • 回避が最優先。オフセットは最後。
  • 一年目の成果は「完璧なデータ」より「優先順位とギャップの可視化」。
  • 金融はポートフォリオ経由。事業会社は土地とサプライチェーン。