Module 1
Nature Positiveとは何か/KMGBF
定義と世界目標の地図を持つ
学習目標
- Nature Positiveの定義とベースライン年を説明できる
- ノーネットロスとの違いを言える
- KMGBFの4ゴール・23ターゲットと30by30・ターゲット15を位置づけられる
この検定の役割
ここは、ネイチャーポジティブの言葉と基礎の考え方を身につける場所です。定義、条約、科学、開示、経済の論拠を同じ地図に載せます。この共通言語があると、あとの診断や実務のアプリが楽しめます。暗記帳ではなく、取り違えをほどくための入門です。
なぜ「ポジティブ」なのか
長年、自然政策の言葉は「守る」「減らさない」が中心でした。しかしIPBESが示すように、生物多様性は過去50年で大きく損なわれています。損失速度を緩めるだけでは、2020年時点ですでに下がった水準に固定されてしまいます。Nature Positiveは、損失を止める(halt)だけでなく反転させる(reverse)こと、つまりネットで自然を回復軌道に乗せることを目標に据えます。
定義の骨格
Nature Positive Initiativeなどが共有する定義は次の三点です。(1) 測定可能な自然の状態(種、生態系、自然の健全性)を対象にする。(2) 2020年をベースラインとする。(3) 2030年までに損失を止め反転させ、2050年までに回復させる。植林本数や寄付額、カーボンオフセット量は、それ自体がNature Positiveの達成証明にはなりません。
KMGBFという「公的な物差し」
2022年12月、生物多様性条約COP15(モントリオール)で昆明・モントリオール生物多様性枠組が採択されました(決定15/4)。2050年ビジョン「自然と共生する世界」に対応するゴールA〜Dと、2030年までの23ターゲットがあります。科学の根拠はIPBES、企業開示の実務はTNFD、経済の論拠はWEF New Nature Economy、手順はWBCSD Roadmaps to Nature Positiveです。担当者がまず押さえるべきは、ターゲット3(30by30)、ターゲット2(劣化した生態系の30%を回復下に置く)、ターゲット15(事業の影響評価・開示・削減)、ターゲット18(有害奨励の改革)、ターゲット19(資金動員)です。
国内実装の一例
各締約国は生物多様性国家戦略(NBSAP)でKMGBFを国内化します。日本では生物多様性国家戦略2023-2030、30by30 Alliance、自然共生サイト(OECM)がその例です。検定の「定義」は、特定国の制度を暗記することではなく、条約・世界目標・科学・開示を同じ地図で読めるようにするためのものです。
要点
- ベースラインは2020年。到達の山場は2030年と2050年。
- ノーネットロス ≠ Nature Positive。後者はネットゲインを含む。
- 企業開示の国際的根拠の一つがKMGBFターゲット15。